この記事では、行政書士試験の難易度を他の資格の合格率と比較しながら考えていきたいと思います。
行政書士試験の合格率の推移
まずは過去10年ほどの行政書士試験の合格率の推移を見てみましょう。
受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |
---|---|---|---|
2022年度 | 47,850人 | 5,802人 | 12.13% |
2021年度 | 47,870人 | 5,353人 | 11.18% |
2020年度 | 41,681人 | 4,470人 | 10.72% |
2019年度 | 39,821人 | 4,571人 | 11.48% |
2018年度 | 39,105人 | 4,968人 | 12.70% |
2017年度 | 40,449人 | 6,360人 | 15.72% |
2016年度 | 41,053人 | 4,084人 | 9.95% |
2015年度 | 44,366人 | 5,820人 | 13.12% |
2014年度 | 48,869人 | 4,043人 | 8.27% |
2013年度 | 55,436人 | 5,597人 | 10.10% |
2012年度 | 59,948人 | 5,508人 | 9.19% |
行政書士試験の合格率はだいたい例年10~12%前後で推移していることが分かります。
一時期(15年前くらい)はもう少し合格率が低い傾向にあったのですが、
2010年以降は上記表くらいの数値で定着したようです。
又、2022年度を例にとってみると行政書士試験では受験者の47850人の内、男女構成比が
- 男性 32627人
- 女性 15223人
となっており、女性の方もたくさん受験されていることが分かります。
他の資格試験の合格率と比較してみる
それでは他の法律系の国家資格、文系の国家資格の合格率と比較してみます。
合格率 | 試験科目数 | |
---|---|---|
行政書士 | 10~12% | 7科目 |
司法書士 | 3~5% | 11科目 |
社労士 | 5~7% | 8科目 |
中小企業診断士 | 4~7% | 11科目 |
宅建士 | 15~17% | 4科目 |
この合格率から各試験の難易度を順位付けすると、
- 司法書士
- 中小企業診断士
- 社労士
- 行政書士
- 宅建士
となります。
行政書士試験の難易度は「やや高い」
合格率や科目数の多さから、行政書士試験の難易度は「やや高い」と言えるでしょう。(司法書士などは「非常に高い」という括りになります)
合格率10~12%前後といわれる行政書士試験は、受験者の10人に1人しか合格できない過酷な試験であることから、この試験に合格することは、決して簡単なことではありません。
資格試験の難易度
分かりやすく表現するならば、
行政書士試験は宅建より難しいが、司法書士試験よりも楽である。
ということでしょう!
行政書士試験の難易度を大学の偏差値で考えてみると
ちなみに行政書士試験や他の資格試験を大学の偏差値に置き換えて表現してみると、
偏差値 | |
---|---|
行政書士 | 60~62 |
司法書士 | 71~73 |
社労士 | 62~64 |
中小企業診断士 | 64~66 |
宅建士 | 55~57 |
行政書士試験は偏差値60~62くらいになるのではないでしょうか。(司法書士試験は偏差値70オーバーの難関試験になります)
なぜ行政書士試験の合格率は低いのか
行政書士試験は300点満点中180点を取れば合格(6割正解でOK)するという、一見するとそこまで難しくないように感じられる方も多いかもしれません。
しかし、行政書士試験の合格率が10~12%程度ということを考えれば、10人中9人が不合格となる難しい試験だということが分かります。
なぜそこまで合格率が低いのか?その理由を4つ挙げていきます。
足切りラインの設定が3つある
行政書士試験は、「法令科目」と「一般知識科目」の2つの科目で構成されています。
合格するためには、「法令科目」「一般知識科目」「総合」の3つの項目で基準点を満たす必要があります。
法令科目は配点が高いため、足切り点を上回るためには、最も時間を割き準備をする必要があります。
しかし一般知識科目も対策しにくい科目であり、足切り点があるため決して油断はできません。法令科目だけでなく、一般知識科目についても、時間配分を考えて、早めに学習を開始し、しっかり対策をする必要があります。
学習の科目数や範囲が広い
そして行政書士試験は学習する科目数や範囲が広いのです。
法令科目 | 憲法・基礎法学・行政法・民法・商法 |
一般知識科目 | 政治・経済・社会・情報通信・個人情報保護・文章理解 |
一番問題数が多く大切となる科目は行政法と民法になります。
しかし、一般知識の文章理解など、現代文の読解力や答えを導き出す能力まで求められる問題もあります。
このあたりがより一層試験を難しくして、合格率を低くしている要因です。
出題形式が択一式だけじゃなく記述もある
又、行政書士試験はほとんどの問題が択一式となりますが、その他にも多岐選択式問題や記述式問題もあるなど、出題の形式が多様となります。
特に記述式の問題は例年20点×3問(合計60点)出題されており、この記述式が合否を左右するといっても過言ではありません。
記述式問題の対策をしっかりする必要があり、ここで得点を稼ぐには、十分な知識力とふかい理解度が求められるのです。
試験を受けるハードルは低い
そして最後の理由は、上記してきたように試験問題は複雑で難しい要素が詰まっているのに対し、試験を受けることは誰でも出来るので、受験するハードルは低いのです。
ですからその昔、受験者数が多かったとき(昔は受験者数が約10万人の頃もあり)は、その分、記念受験のような人も多く、合格率が3%の年もあったほどです。
合格のために必要な勉強時間はどれくらい
それでは実際に行政書士試験に合格する為に必要な勉強時間はどれくらいなのでしょうか。
一般的に、
行政書士試験に合格する為に必要な勉強時間は600~1000時間程度
と言われています。
他の資格と比較してみても、そこそこの勉強時間が必要だということが分かります。
必要とされる勉強時間 | |
---|---|
行政書士 | 600~1000時間 |
司法書士 | 3000時間 |
社労士 | 600~1000時間 |
中小企業診断士 | 800~1200時間 |
宅建士 | 300~500時間 |
個人的に通信講座のフォーサイトを利用して行政書士試験に合格した私の意見を言うならば、法律系初学者で行政書士試験の合格するためには、勉強時間は1000時間は必要と考えておいた方がいいと思います。
1年間365日勉強するとするならば、毎日2.7時間くらいの学習時間を覚悟しておいた方がいいということです。
独学で合格する難易度は・・・
もしあなたが今、行政書士試験に独学で挑もうとしているなら
- 計画的なカリキュラム
- 疑問点を解決する環境
- モチベーションを継続する意志
これらに自信がある方でないと難しいでしょう。法律系初学者の方に独学はおすすめできません。
合格までの最短ルートを辿るという意味では独学では無理がありますので、必然的に勉強時間も1000時間以上必要になると考えたほうがいいでしょう。
加えて、勉強期間も2~3年必要というスタンスで問題ない方ならば、独学でチャレンジするのもありでしょう。
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